喘息発作で酸素化が低下する理由として、
「気道が狭くなる → 換気が落ちる → 肺胞低換気」
と説明されることがあります。
“気道が狭い=換気が落ちる=肺胞低換気”という説明は直感的で理解しやすいため、
現場でもよく使われますが、実際には病態がまったく異なります。
これは 重症発作の“末期”では確かに正しい です。
呼吸筋が疲弊し、肺全体の換気量が落ちると、実際に肺胞低換気が起こり、PaCO₂ も上昇します。
しかし、多くの喘息発作(軽症〜中等症)ではこの説明は当てはまりません。
この段階の患者は努力呼吸で換気量をむしろ増やしており、PaCO₂ は正常〜低下します。
では、なぜ酸素化だけが低下するのか。
結論は明確で、
喘息の低酸素血症の主因は「肺胞低換気」ではなく、
換気血流比の不均等(V/Q mismatch)です。
気管支攣縮や痰により“肺の一部だけ”換気が悪くなることで、
換気と血流のアンバランスが生じ、これが酸素化低下の中心的なメカニズムになります。
喘息発作で酸素化が低下する本当の理由
Tey:救命士喘息で酸素化が悪化するのは、低換気だからじゃないの?



それは、重症化した場合だけだよ
ネブライザーとかする患者は、違う機序なんだ



え!?
喘息発作では、気道の攣縮や痰・粘液栓によって 肺の一部だけ換気が悪くなる部位 が生じます。
しかし、肺全体の血流は保たれているため、以下のようなアンバランスが起こります。
- 換気が落ちた肺胞(V↓)
- 血流は普通に来る(Q→)
この V(換気)と Q(血流)の不均等=V/Q mismatch が、
喘息発作で酸素化が低下する“本丸”です。
なぜ酸素だけが下がり、CO₂ は上がらないのか
患者は努力呼吸で換気量を増やすため、
PaCO₂ は正常〜低下 します。
つまり、
「酸素だけが落ちる」=V/Q mismatch の典型像
です。
肺胞低換気は「重症化した後」に起こる別の病態
一方、肺胞低換気は 肺全体の換気量が不足する状態 です。
- 呼吸筋疲労
- 意識レベル低下
- 極度の息切れで換気が浅くなる
こうした状況で、
PaCO₂ が上昇(高炭酸ガス血症) します。
これは 重症発作の末期に起こる危険サイン であり、
軽症〜中等症の段階では起こりません。



ここが V/Q mismatch と肺胞低換気の最大の違いです。
V/Q mismatch では PaCO₂ は正常〜低下しますが、
肺胞低換気では必ず PaCO₂ が上昇します。
V/Q mismatch と肺胞低換気の違い
喘息の病態を理解するうえで、この違いは非常に重要です。
「気道が狭い=肺胞低換気」はなぜ誤解されやすいのか
気道が狭くなると換気が落ちる、という説明は直感的で理解しやすいため、
“喘息=肺胞低換気” と誤って説明されることがあります。
しかし実際には、
- 気道狭窄は“部分的”に起こる
- 患者は努力呼吸で換気量を増やす
- CO₂ はむしろ下がる
という特徴があり、
肺胞低換気とは病態がまったく異なります。



つまり、酸素化だけが落ちて CO₂ が上がらない場合は V/Q mismatch
酸素も CO₂ も悪化している場合は肺胞低換気が加わっていると判断できます。
| 病態 | どこが悪い? | 酸素 | CO₂ | 喘息での出現 |
|---|---|---|---|---|
| V/Q mismatch | 一部の肺胞だけ換気低下 | 低下 | 正常〜低下 | 初期〜中等度で主因 |
| 肺胞低換気 | 肺全体の換気低下 | 低下 | 上昇 | 重症化して疲弊した後 |
現場で役立つポイント
● SpO₂ が低いのに CO₂ が上がっていない
→ V/Q mismatch が主体の喘息発作
● SpO₂ が低く、CO₂ が上昇してきた
→ 呼吸筋疲労 → 肺胞低換気 → 危険サイン
CO₂ の動きは、喘息発作の重症度を判断する最も重要な指標のひとつです。
この見分けは、治療方針や緊急度の判断に直結します。
まとめ
喘息発作の低酸素血症は、
「肺全体の換気低下(肺胞低換気)」ではなく、
“部分的な換気低下”による V/Q mismatch が中心 です。
肺胞低換気は重症化して呼吸筋が疲弊した段階で起こる、
別の病態であり、危険サイン です。





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