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クラッシュ症候群に対するKを含む製剤(乳酸リンゲル液点滴)の投与について

目次

クラッシュ症候群

クラッシュ症候群とは、長時間にわたり崩れた家屋の下敷きになるなどしたため傷病者を救助した際に起こる危険な病態です。

阪神・淡路大震災で多くの死亡例が発生したため、話題となりました。別名として、「スマイリング・デス」とも言われています。これは救助され安心した傷病者が、笑顔を見せたとたんに心停止するという病態に由来しています。

死因は、高カリウム血症による致死的不整脈となります。(以下、カリウムをKとする)

これを防ぐために本邦の救急救命士には、救助前に乳酸リンゲル液を用いた大量輸液を行うことが許されています。

救急救命士が特定行為を行うことで救うことができる病態になります。

しかしここで疑問が生まれます。

高K血症を防ぐために、Kを含む輸液をして効果があるのだろうか?

ごもっともな意見だと思います。

この疑問に答えるためにネットを検索しましたが、救命士に伝わりやすい解説が見つからなかったため、クラッシュ症候群に対する乳酸リンゲル液投与という点に絞ってここで解説します。

乳酸リンゲル液の組成

乳酸リンゲル液の組成を添付文書(ラクテック)を基に提示します。(今回の説明に必要な部分のみを提示します)

血液中値については、大塚製薬様のページより引用させていただきました。

NaKCaCl
乳酸リンゲル液130 (mEq/L)4 (mEq/L)3 (mEq/L)109 (mEq/L)
血液中142 (mEq/L)4 (mEq/L)5 (mEq/L)103 (mEq/L)

これは、血液に非常に近い組成となっています。

これがメリットであり、救命士の使える唯一の輸液製剤とされていると私は考えています。

ここまでで、乳酸リンゲル液のKと血液中のKの値の関係が分かったかと思います。

血液濃度と同等のKを含む輸液をして、高K血症を防げるの?

この疑問にお答えするため、次は病態を見ていきます。

病態

例として、家屋倒壊により右大腿から末梢をすべて挟まれている状態で、12時間が経過しているものとします。

クラッシュ症候群を疑うね

高K血症

右足の細胞は、血流途絶・外部からの圧迫などの外傷により細胞が壊死していきます。

これにより、右足にはKやミオグロビンなど有害な物質が多く存在しています。

しかしこの状態では、右足に血流がないため右足だけの問題となり、全身状態には影響が出ません。

しかし救出などで右足に血流が再開した場合、この右足の有害物質が一気に全身に広がります。

その中で、急速に致死的な経過をたどるのが、Kです。

高K血症は、心臓の正常なリズムを妨害し、心停止に至ります。

これが、クラッシュ症候群よる高K血症の病態です。

循環血液量減少

挟まれた原因の外傷や他の外傷により、循環血液量減少が減少している状態です。

挟まれた右足は血流が途絶しているため、全身の体循環から除外されています。

その状態だからこそ、血液量が足りており、体循環が保たれている可能性があります。

そこに突然挟まれた右足の解放が行われると、右足が体循環に加わります。そのため、必要な循環血液量が増加すたるため、血液量不足によるショック進行が起こります。

循環血液量減少には、輸液が有効なのはわかったけど、高Kについてはわからないよ?

乳酸リンゲル液による大量輸液の効果(オレンジジュースの例)

例として、
オレンジジュースを血液
塩をK
とします。

なんで、オレンジジュースなの?

オレンジジュースには、Kが多く含まれている代表的な飲み物だからだよ

オレンジジュースと塩で例えるとわかりやすいかもしれません。

オレンジジュースには少なからず、「K」が含まれています。

コップ一杯とペットボトル1本も含まれる「K」濃度は同じなので、同じしょっぱさを感じます。

しかしここに、塩を小さじ1杯でも加えるとどうでしょう。

コップ1杯のほうは、塩辛く飲むことができないでしょう。

対してペットボトル1本に塩を小さじ1杯では、変化に気づかない程度の塩分増加かもしれません。

これが全身で起こっていると考えます。

結論として体循環血液量を増やすことができれば、「K」が流入しても全身への影響を抑えることができるということです。

そこで、乳酸リンゲル液の「K」濃度は血液とさほど変わらないように設計されている点に戻ります。

つまり、オレンジジュースにいくらオレンジジュースを追加してもしょっぱさは変わりません。つまり、乳酸リンゲル液を輸液しても「K」濃度は上昇しないということです。

乳酸リンゲル液の投与目的は、オレンジジュース(循環血液量)を増やすことにあるのです。この点を理解すると、なぜ乳酸リンゲル液でも問題ないかが理解できると思います。

つまり、乳酸リンゲル液を入れることで、K濃度を下げるのではなく、
薄めるってことだね。

その理解で正しいよ。

オレンジジュースに塩を入れるとか狂気の沙汰だけどね。

それは、言わないでください。

総括

クラッシュ症候群は、乳酸リンゲル液の大量輸液で防ぐことができる!

これまでの解説で、Kを含む乳酸リンゲル液投与でクラッシュ症候群をある程度防ぐことができることが、理解できたと思います。

Kフリー製剤(Kが含まれていない輸液)でなければならないというわけではありません。

救命士が使える輸液は、乳酸リンゲル液に限られているわけですから、躊躇せずに指示要請しちゃってください。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

筆者のあとがき

初めての医療コンテンツ配信が、文献的根拠が少ないものになってしまいました…

記載されいている内容は文献的根拠が少なく、指摘箇所が多いかと思いますが、優しくご指摘ください。

まだまだ発展途上のサイトですが、これからもよろしくお願いします。

引用リスト

日本薬局方 L-乳酸ナトリウムリンゲル液ラクテック®注 添付文書 https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00060336.pdf

大塚製薬工場 輸液の基礎知識 最終閲覧:2025.11.27 https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/knowledge/

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