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COPD急性増悪にBVM換気は有効か?

― 病態生理とデバイス構造から考える“PEEP”の重要性 ―

COPDの急性増悪で見られる呼吸不全は、ひとつの原因で説明できる単純な病態ではなく、複数の機序が重なって起こる“複合的な呼吸不全”
この病態を理解すると、CO2ナルコーシスを防ぎながら、意識障害を防いだ酸素投与ができるようになるよ!

Tey:救命士

COPD患者に酸素投与は憚られるけど、
酸素なしでBVM換気するのはどう?

ちゅーん

それは、やめた方がいいね

目次

COPDによる呼吸不全をつくる4つの主要機序


① V/Q不均衡(換気血流比不均衡)

COPDの低酸素血症の主因

  • 気道閉塞・気道虚脱で換気が入りにくい肺胞が増える
  • 血流はそのまま来る
  • → 低換気肺胞(V↓/Q→)が増えて低酸素血症
    急性増悪の低酸素血症は、ほぼこのV/Q不均衡が中心

② 肺胞低換気(alveolar hypoventilation)


CO₂貯留の主因

  • 気道抵抗↑
  • 呼気が出し切れない(air trapping)
  • 動的肺過膨張
  • 横隔膜が平坦化
  • 呼吸筋疲労
  • → 換気量が足りずCO₂が排出できない
    つまり、CO₂貯留は“呼吸仕事量が限界”の問題
Tey:救命士

BVM換気で改善できそうじゃないですか?

ちゅーん

あと2つ説明してからね

③ 拡散障害(diffusion impairment)


肺気腫で肺胞壁が破壊されると、

  • 拡散距離↑
  • 表面積↓
  • → 酸素取り込み低下
    急性増悪の主因ではないが、慢性低酸素血症の背景として重要。

④ シャント(shunt)

COPD単独では大きくないが、

  • 無気肺
  • 肺炎
  • 粘液栓閉塞
    などが重なるとシャントが増え、酸素投与で改善しにくい低酸素血症になる。

COPDまとめ

COPD急性増悪の呼吸不全を一言でまとめると

「V/Q不均衡による低酸素血症」+「肺胞低換気による高CO₂血症」
この2つが同時に進む“混合性呼吸不全”。

Tey:救命士

やっぱり、BVMで改善しそうですよ?

ちゅーん

次の章で説明するね

COPDのV/Q不均衡の本体は「気道虚脱(PEEP不足)」

COPDの末梢気道は、

  • 壁が弱い
  • 弾性収縮力が低い
  • 呼気で簡単に潰れる

そのため、

  • 呼気終末に気道が虚脱
  • → 換気が入りにくい肺胞が増える
  • 慢性的なV/Q不均衡が形成される

急性増悪では痰や炎症が上乗せされ、さらに悪化する。

救命士向け:PEEPとは何か(わかりやすく)

ちゅーん

さて、PEEPって何だっけ?

Tey:救命士

呼吸器の設定項目の一つです!

ちゅーん

何を表してるんだっけ?

Tey:救命士

わかりません。

PEEP(Positive End-Expiratory Pressure)は、

「息を吐き切ったあとも、気道がペタンと潰れないように支えておく圧」

COPDでは気道が潰れやすいため、
PEEPがあるかどうかで換気の入り方が大きく変わる。

PEEPがあると:

  • 気道虚脱を防ぐ
  • 換気のムラが減る
  • V/Q不均衡が改善
  • 酸素化が改善

つまり、COPD急性増悪では“換気”より“PEEP”が重要

BVM換気がCOPDに対して“効果が限定的”な理由

救命士が理解しやすいように言うと、
BVMは逆止弁(one‑way valve)の構造上、呼気が大気へ逃げる“開放系”なのでPEEPが維持できない。

具体的には、

  • 吸気:バッグ → 患者
  • 呼気:患者 → 大気へ排出(逆止弁で必ず外へ逃がす)
  • マスクリークも加わる
  • 呼気終末圧(PEEP)がほぼゼロ

結果として、

  • 換気補助はできる
  • しかしCOPDの主病態である“気道虚脱”は改善できない
  • V/Q不均衡の改善は限定的
Tey:救命士

挿管して人工呼吸器に乗せるしかないですね

ジャクソンリース(Tピース)がCOPDに適合する理由

Tey:救命士

私が使えないやつ!
肺が破裂する恐れがあるやつ!

ジャクソンリースは、

  • 半閉鎖系で呼気が自由に逃げない
  • バッグの抵抗でPEEP様の圧を維持できる
  • 気道に直接接続されるためリークが少ない

そのため、

気道虚脱を防ぎ、COPDのV/Q不均衡に対して理にかなう換気ができる。

もちろん操作難度は高いが、病態生理的には最も合致する。

NPPV(BiPAP)が最も理にかなう理由

ちゅーん

他にも挿管なしで呼吸器を使う方法があるよね?

Tey:救命士

BiPAPです!
たしかに!
使ってます!!

NPPV(特にBiPAP)は、COPD急性増悪の病態に対して最適解です。

  • IPAP(吸気圧):換気を補助 → CO₂排出を改善
  • EPAP(呼気圧=PEEP):気道虚脱を防ぐ → V/Q不均衡を改善

つまり、

「換気不全(CO₂)」と「V/Q不均衡(低酸素)」の両方に同時にアプローチできる唯一の非侵襲的手段」

だからNPPVはCOPD急性増悪に劇的に効く。

最終まとめ

Tey:救命士

安易な考えでした…

ちゅーん

考え続ける姿勢が大事だよ!
これからも、どんどん質問ぶつけてね

Tey:救命士

頑張ります!

  • COPD急性増悪の呼吸不全は
    「V/Q不均衡(気道虚脱)」+「肺胞低換気」 の複合病態
  • 特にV/Q不均衡の本体は PEEP不足による気道虚脱
  • BVMは逆止弁構造により呼気が大気へ逃げるため PEEPが維持できず効果が限定的
  • ジャクソンリースは半閉鎖系で PEEPを維持できるためCOPDの病態に適合
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ちゅーん

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この記事を書いた人

病院救命士
救急に関わる情報を提供しています。
同時に博士課程に所属しており、ACPの質について研究しています。

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